61話B面『念ずれば花開く』

年末をむかえ、みなさまいかがおすごしですか?
世界中の人々が最後の最後までウイルスに振りまわされる一年でしたが、これだけ大変な毎日が続いたんですもの、来年はきっと良い年になるって信じてすごしたいですよね。
「念ずれば花ひらく」
って言葉もあるじゃないですか。
苦しくとも、いっしょうけんめいがんばりつづければ、きっと笑顔になれる日々がやってくる。
あたしは、この言葉を信じます!

このアホ!
トンマ!

「念ずれば花開く?」

笑わせんなバカ!

じゃ聞くけどよ、車券買ってる連中は、毎日どころか買ってるレース全てで念じてるぞ!
毎日毎日、毎レース念じ続けた結果、それでいつしか金持ちになりましたなんてヤツの話、聞いたことあるか?

念じ続けたあげく、ムショに入ったってヤツの話ならいくらでも聞くけどよ。

祈ろうが何しようがダメなものはダメ!
どんなにがんばろうと髪の毛一本届いてなきゃ2着は2着なの!

このバカ!

何を寝ぼけたこと言ってんだトウヘンボク!

そういう腐った性根の持ち主だから、お前はタイトルにだって手が届かなかったんだ!

「念ずれば花開く!」

最高に、いい言葉じゃねえか!

苦しかった日々

以前、デビュー後にオレが、すぐ特進は果たしたもののA級に上がってから丸々一年、優出(優勝戦進出)できなかったって話したことがあったろう。

とにかく準優(準決勝戦)の壁を突破できず本当に苦しんでたんだ。

で、ちょうどそんな頃、1期下の田仲俊克(29期•OB)がデビューしてきてな。
あいつもすんなり特進決めてA級来たんだけど、あのヤロ~、そんなオレを脇目にポンスカポンスカ優出決めていきやがってよ。
正直、こういうヤツを天才って言うのかなって思ったくらいでさ…

まっ、悔しかったけど仕方ねえ。

先に行っちまったヤツの後ろ姿を羨ましそうに眺めてたって意味ねえし、まずは自分の足元をもう一度見つめ直すことにしたんだ。

でよ、ある時、どっかの宿舎でだったかな、田仲と雑談してて、オレはこう言ったんだ。

「オレは予選の10連勝を目指す!」

ヤツは「なんじゃそりゃ?」って笑って聞き返してきたよ。

オレは、こう答えた。

「オレだってA級1班、上のクラスで戦う選手を目指してんだ。

そのためには、特選(競走)組と走れる機会を一戦でも多く手に入れてえ!」

「初日に勝って準優乗れれば二日間特選組と戦えるし、準優に乗り続けることができれば2班の点数取ることも可能。

それで選抜(競走)まわりになれれば、さらに特選組と戦える機会が増える!」

 

田仲のヤロ~、ニヤニヤしながら、

「ふ~ん、まっ、でも準優突破するのが一番手取り早い気がすっけどな…」

バカヤロ、お前と違ってそれがど~してもできなかったから、まずは自分なりの目標を作ったわけじゃねえか…

これだから天才ってのは困るんだ。

苦労の後、花は開いたぞ

ほんでな、オレの方も有言実行ってわけでもねえんだが、あの優出できなかった一年間、それでも毎日頑張って初日のピンを増やしていき実際に予選10連勝ってのもできるほどになったんだ。

もう、意地だよな。

そして、ようやく高かった準優の壁を突破したら、今度は逆にバンバン優出も果たせるようになり、その後、A級1班っつう神の領域への道が開き始めたんだ。

【※当時はA級(1班~5班)B級(1班~2班)の2層7班制。最高位A1は約四千名の選手中、定数120名という狭き門だった】

まさに「念ずれば花開く」って言葉通り。

たとえよろしくない状況が続いてたとしても辛抱して諦めず、常に前に向かってチャレンジし続けることがいかに大切かってことよ。

桜井さんはそうだったかもしんねえけど、普通はそううまくいかねえって!
実際オレは、ムショ行くヤツをこの目で何人も見てきてんだから…
やられ続けたあげく…

サクライセンセェ、ひねくれ者はムシムシ!

そうだな!
ど~せヤツも来年は懲役だろう…

オレも、ちょっと登場させて。

「念ずれば花開く」って、実は10月にオレん家に来てくれたテルちゃん(矢野光世/104期•福岡)が、「あたしが大切にしている言葉なんだ」って話してくれた言葉なのよね。

この言葉って、いろんな風に解釈できるし、オレも「素敵な言葉だよね」って共感したんだ。

テルちゃん、がんばれ!

テルちゃん今、脳みそや競走得点以外の問題で一時はムショ…じゃなくて入院生活送るハメになるなどついてねえ状況が続いてるんだけど(脳みそに関しては、お医者さんから諦めてくれと言われたらしい)、そんな中、それでもすごく明るく前向きな言葉を発してて復帰に向けてかなり闘志を燃やしてるんだよね。

話を聞いてると、体の不調で苦しんでる間、いろんなことを考え、思い、結果、心の方はグンと成長できたんだろうなって感じ取れるの。

(あの脳みそのレベルで、にわかには信じられないんだけど)

脳みその方はお医者さんもサジを投げちゃったってことで、もう仕方ねえんだろうけど、それでもスポーツ選手に限らず人間にとってハートの成長ってのはかなり大きいと思うんだ。

だからオレ、復帰してからのテルちゃんに興味津々。
脳みそは無理でも、得点はきっと上げられると思う。

「念ずれば花開く」って言葉、ぜひ体現して欲しいな。

そうだったんですね…
うん、ぜひ体現してほしい!
テルちゃん、がんばって~!!!!

【緊急追記】

12月5日、京王閣にて西武園クラブ、樋口瑛土選手(109期•東京)がA級(1~2班戦)初優勝を達成!
同クラブOB、桜井氏が大喜び。

「本当によくやった!
コツコツがんばってきた成果。
片目が開くと二つ目、三つ目と結構ポンポンいくもんだ。
さらなる飛躍へのチャンス。
ますますがんばれ!」

と、特別競輪の優勝、ただの一回きりで店じまいした同氏による、説得力の全くないお言葉を頂戴いたしました。

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